ご挨拶

医療情報技師育成事業について

一般社団法人日本医療情報学会 医療情報技師育成部会
部会長  池田 和之(奈良県県立医科大学附属病院)


 医療の情報化が進むなか、医療情報システムの仕組みや診療で発生する情報を理解して、医療情報基盤を構築・管理し、医療の質や経営の改善に寄与できる人材を継続的に育成していく必要があります。

 日本医療情報学会では、医療情報に関する専門職の育成を育成する事業を進めるため、医療情報技師育成部会を組織しています。医療情報技師育成部会では、医療情報基盤の整備からデータ利活用の実践までを担える人材として「医療情報技師」「上級医療情報技師」を育成することを目的として、教科書の刊行、能力検定試験の実施、生涯研修などの事業を行っています。医療情報技師能力検定試験の合格者はこれまでに延べ約2万8千人、上級医療情報技師能力検定試験の合格者は約600人(2025年9月現在)を数え、多くの医療情報技師、上級医療情報技師の方々が全国の医療機関や企業などで活躍しています。

 電子的にやりとりされる診療情報をうまく活用することは、医療の質・安全の向上、新しい医学的知見などの獲得につながっていきます。しかし、診療業務をよく理解して、個人情報保護や情報セキュリティを確保し、情報処理技術を正しく使うことができる人材がいなければ、このような仕組みは実現しません。また、医療分野のさらなる情報化と情報セキュリティの強化は、現在、わが国で注目されている喫緊の課題ですが、この取り組みには、機器やサービスを購入すればよいのではなく、それらを主導的に推進できる人材、取り組みを担える人材こそが重要であると言えます。

 さらに、医療DX推進のもと、全国の医療機関をつなぎ、情報を共有する社会が構築されようとしています。ここで共有される医療情報は、適切に管理されなければ、他の施設で誤った解釈を生じかねません。全国で安全に共有できる情報(標準化された情報)を、各施設で管理する人材もたいへん重要となります。

 医療情報技師育成部会としては、医療情報に関する専門職である「医療情報技師」「上級医療情報技師」がさらに高い知識、技術をもって活躍できるように支援して参りたいと考えています。

2025年9月